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東京高等裁判所 昭和33年(う)2431号 判決 1959年3月18日

被告人 飯岡幸造

主文

本件控訴を棄却する。

当審における未決勾留日数中五十日を原判決の懲役刑に算入する。

当審における訴訟費用は全部被告人の負担とする。

理由

控訴趣意第一点について。

賍物寄蔵罪の成立には、犯人がその預託物の賍物であること、すなわち他人の財産権を侵害して不法に領得せられたものであるとの情を知つていれば足りるのであつて、さらに進んで具体的にその物がどのような犯罪によつて取得せられたものであるとか、また本犯はなに人で被害者は誰であるというようなことについてはこれを知つていることは必要でない。ところでこれを本件について見るに、目黒市郎が未だ逮捕されておらず、従つて被告人が同人から預つた原判示物件が同人の窃取にかかるものであるとの直接の証拠のないことは所論のとおりであるが、原判決の挙示する各証拠を綜合すると、右物件はいずれも入江竹司方から盗まれたものであり、また被告人が目黒市郎から頼まれて右物件を預かる当時、被告人は右物件がいずれもどこかから盗まれて来たものであることに気がついていた事実を認めることができるから、被告人に対し右物件についての賍物寄蔵罪の成立を認めるに十分であつて、被告人において右物件が入江竹司方から盗まれたものであることを知らず、またかりに所論のように目黒市郎が右物件を窃取した事実は明らかでないとしても、毫も右賍物寄蔵罪の成立に影響を及ぼすものではないから、論旨は理由がない。

(その他の判決理由は省略する。)

(裁判官 滝沢太助 久永正勝 八田卯一郎)

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